実務従事とは?要件・ポイント・実務補習との違いを完全解説
この記事でわかること
- 実務従事とは何か(制度上の位置づけ)
- 登録に必要な15日、更新に必要な30ポイントの数え方
- 実務従事の対象になる企業・ならない企業
- 様式第18と様式第19の違い
- 実務補習との違いと、どちらを選ぶべきか
この記事は、中小企業庁が公開している「Q&A 申請書、証明書等の作成要領」(2026年6月1日更新)および中小企業診断士関係様式(2026年6月1日更新)をもとに整理しています。制度は改定されることがあるため、実際の申請前には必ず中小企業庁の公式ページで最新情報をご確認ください。
1. 実務従事とは
実務従事とは、中小企業診断士が中小企業等に対して行う経営の診断・助言業務のことです。この実績が、資格の登録と更新の要件になります。
診断士の資格は、試験に合格しただけでは登録できません。また、登録した後も5年ごとの更新が必要で、そのたびに実務の実績が求められます。この「実績をどう積むか」の選択肢のひとつが、実務従事です。
実務要件を満たす方法は、大きく分けて次のとおりです。
| 対象となる業務 | 使用する証明書 |
|---|---|
| 経営の診断助言業務 | 様式第18 または 様式第19 |
| 経営に関する窓口相談業務 | 様式第20 |
| 登録実務補習機関が行う実務補習の受講 | 様式第13(実務補習修了証書) |
| 実務補習の指導 | 様式第14 |
| 養成課程・登録養成課程での実習指導 | 様式第21 |
※新規登録時の実務要件は、上の表の上から3つ(診断助言業務・窓口相談業務・実務補習の受講)が対象です。実務補習の指導、養成課程の実習指導は、新規登録の要件には使えません。
つまり、「実務補習を受ける」か「実務従事で実績を積む」か——登録要件を満たすには、この2つが主な選択肢になります。
2. 必要な日数:登録は15日、更新は30日
新規登録 第二次試験に合格した日から3年以内に、15日以上の実務要件を満たして登録申請をする必要があります。
更新登録 登録の有効期間は5年間。更新には、5年間で30日以上の診断助言業務等の実績が必要です。あわせて、理論政策更新研修などの「専門知識補充要件」を5回以上満たす必要があります。
業務休止からの再開 休止から再開する場合は15日以上、その後の初回更新は15日以上、という扱いになります。なお、同じ証明書を別々の申請で使い回すことはできません。再開申請と初回更新で使う証明書は、分けて用意する必要があります。
3. ポイントの数え方:1日=1ポイント
実務従事のポイントは、実務従事を行った日数で数えます。1日=1ポイントです。
ここで間違えやすい点が2つあります。
① 1日に2社を診断しても、1日(1ポイント) 同じ日に複数の企業に対して指導を行っても、カウントは1日です。どちらか一方の証明書のみが有効になります。複数の証明書で日付が重複した場合は、重複日を除いた日数を診断士自身が記入欄に記載します。
② すべての作業が対象になるわけではない 対象となるのは、中小企業等に出向き、直接、経営者等に経営診断・助言を行った日数です。有償・無償は問いません。
一方で、次のものは対象外とされています。
- 診断助言と関係のない調査・分析
- 資料作成
- 申請書作成のアドバイス
- セミナー講師
- 執筆活動
「作業をした日数」ではなく「経営者に診断・助言をした日数」である、という点が重要です。
4. 実務従事の対象になる企業・ならない企業
実務従事の対象となるのは、中小企業支援法に定める中小企業者です。業種ごとに、資本金または従業員数の基準が決まっています。
| 業種 | 資本金 または 従業員数 |
|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 3億円以下 または 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 または 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 または 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 または 50人以下 |
| ゴム製品製造業 | 3億円以下 または 900人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 または 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 または 200人以下 |
事業協同組合などの中小企業団体も対象です。また、継続的に収益事業を行う法人として、医業・歯科医業を主たる事業とする法人(従業員300人以下)、社会福祉法人(100人以下)、NPO法人(業種により50〜300人以下)も対象になります。
対象にならない法人(要注意)
学校法人、職業訓練法人、宗教法人、商店会、商工会、商工会議所、各種基金、日本赤十字社、独立行政法人、農業組合法人、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人、生活協同組合、有限責任事業組合(LLP)など。
「知り合いの会社で実務従事を」と考える場合、まずこの要件に当てはまるかを確認してください。
5. 様式第18と様式第19の違い
証明書は、誰に証明してもらうかで使い分けます。ここを間違えると、やり直しになります。
様式第18を使う場合
- 公的な機関等から派遣されて、中小企業等に診断助言を行った場合
- 金融機関や大企業等に所属し、取引先の中小企業等に診断助言を行った場合
→ 実施機関の代表者の証明(代表印)を受けます。
様式第19を使う場合
- 診断士が事業として行う、中小企業等への診断助言業務
- 勤務先が中小企業等で、経営者の指示のもと自社の診断助言を行った場合
→ 診断助言先の企業の代表者の証明(代表者印)を受けます。
注意点
- 社長が診断士である場合、社長としての自社の経営判断を実務実績にすることはできません
- 金融機関の支店長等は、自身の実績を自分で証明することはできません
- 証明に使う印は電子印でも可。オンライン申請の場合はスキャンデータで構いません
- 受診企業名は、原則として記載が必要です(匿名にはできません)
様式は中小企業庁のページからダウンロードできます(2026年6月1日更新版が最新)。
📄 様式第19の書き方は、別記事で詳しく解説しています → 様式第19の書き方と実務従事ポイントの証明方法
6. 2026年6月から、オンライン申請が始まりました
2026年6月より、中小企業診断士の登録・更新に関する手続きが、マイナポータルを利用したオンライン申請に対応しています。中小企業庁では、原則としてオンラインでの手続きを案内しています。
紙で申請する場合は、登録証や証明書といった重要書類を郵送することになるため、簡易書留など配達状況が確認できる方法での送付が推奨されています。
最新の手続き方法は、中小企業庁のオンライン手続きのページをご確認ください。
7. 実務補習との違い
登録要件を満たす方法として、実務補習と実務従事はよく比較されます。制度上はどちらでも要件を満たせます。違いは、中身と進め方です。
| 実務補習 | 実務従事 | |
|---|---|---|
| 実施主体 | 登録実務補習機関 | 民間サービス、または自ら診断先を見つける |
| 進め方 | 指導員のもと、グループで診断 | サービスにより異なる(個人・グループ) |
| 日程 | 決められた日程 | サービスにより異なる |
| 内容 | 診断士としての「型」を学ぶ | 実際の経営課題への診断助言 |
| 証明書 | 様式第13(修了証書) | 様式第18 または 様式第19 |
実務補習が向いている人
- 対面でしっかり指導を受けたい
- 診断士としての基本の型を身につけたい
- 同期とのつながりを作りたい
実務従事が向いている人
- 日程を自分で決めたい
- オンラインで完結させたい
- 実際の経営課題に取り組みたい
- 費用を抑えたい
なお、実務補習は5日間コースが廃止され、現在は8日間コースと15日間コースでの実施となっています。登録要件の15日を満たすには、15日間コースを1回、または8日間コースを2回受講する形が一般的です。
📄 実務補習を受けずに登録要件を満たす方法は、こちらで詳しく解説しています → 実務補習の代わりに実務従事で15日を満たす方法
8. 実務従事の機会をどう見つけるか
実務従事は「自分で診断先を見つける」ことも可能ですが、実際には次のような壁があります。
- 中小企業とのつながりがない
- 企業内診断士で、本業が忙しく時間が取れない
- 対象要件を満たす企業か判断が難しい
- 証明書の依頼が心理的にハードルが高い
このため、実務従事の機会を提供する民間サービスを利用する人が増えています。サービスによって、開催形式(対面・オンライン)、日程(土日中心・自由)、取得できるポイント数、費用が異なります。
選ぶときは、次の点を確認するとよいでしょう。
- 取得できるポイント数(必要な日数を満たせるか)
- 開催形式と日程(本業と両立できるか)
- 開始までの期間(更新期限に間に合うか)
- 証明書の発行時期(申請に間に合うか)
- 費用(1ポイントあたりで比較する)
9. まとめ
- 実務従事とは、中小企業等への経営の診断助言業務のこと
- 登録には15日、更新には5年で30日の実績が必要
- 1日=1ポイント。1日に2社を診断しても1日
- 資料作成やセミナー講師は対象外
- 対象企業には業種ごとの規模要件がある
- 証明書は、誰に証明してもらうかで様式第18と第19を使い分ける
- 2026年6月から、オンライン申請に対応
更新期限が近い方へ
更新に必要な30ポイントを、期限までに満たせるか不安な方は、残り日数から逆算できます。
HAMMERについて
HAMMERは、AIを右腕に、経営者のナマの課題を解く完全オンラインの実務従事プログラムです。
- 最短、申込当日にスタート
- 5日/10日/15日から選択(登録前の15日要件にも対応)
- 修了後、最短翌日に様式第19を発行・郵送
- 毎日のレポートを提出すれば、評価に関わらずポイントを発行