診断士のAI活用は、役割分担さえ間違えなければいい
最終更新:2026年9月
この記事でわかること
- AIと診断士の、正しい役割分担
- プロンプトの技術が要らない理由
- 現役経営者が、4つのAIをどう使い分けているか
この記事に、プロンプトのテクニックは出てきません。 覚えることもほとんどありません。必要なのは、目的を決めて「どうすればいい?」と尋ねることだけです。
1. 役割分担が、すべての前提
AIをうまく使えない人と、使いこなす人の差は、テクニックではありません。役割分担を分かっているかどうかです。
AIの役割は、効率化。 あなたの役割は、GOAL設定と意思決定。
どこへ向かうかを決めるのは、あなた。そこへ行く手数を稼ぐのが、AI。どの案を選ぶかを決めるのは、あなた。選択肢を並べるのが、AI。そして、経営者に対して最後に責任を負うのは、あなたです。
この線を越えて「AIに全部やらせる」と、二つの問題が起きます。ひとつは、経営者に見抜かれること。もうひとつは、あなたに何も残らないことです。
逆に、AIを一切使わないと、手数で負けます。人間が3つ考えている間に、AIは20出します。使わない理由はありません。線を間違えなければ。
具体的には、こう分かれます。
| あなたの仕事 | AIの仕事 |
|---|---|
| 何を解決すべきか決める(GOAL設定) | 候補を幅広く出す |
| どれが本丸か判断する(意思決定) | 情報を整理する |
| 経営者にどう伝えるか決める | 下書きの骨を組む |
| 最後に責任を負う | — |
判断は渡さない。作業は渡す。それだけです。
2. プロンプトの技術は、要らない
「AIは大したことない」と言う人の多くは、目的を言っていないだけです。
うまくいかない聞き方
「この会社の課題を教えて」
何のために、誰に向けて、どうしたいのか。AIには何も分かりません。
うまくいく聞き方
「従業員20名の地方の製造業について、経営課題を見つけたい。社長は現場出身で、数字が苦手。売上は横ばい。この会社に何を提案すべきか判断したい。どうすればいい?」
技術は一切使っていません。状況を話して、目的を言って、どうすればいいかを聞いただけです。
人に相談するのと、同じでいい
信頼できる部下に相談するとき、書式を整えたりはしません。事情を話して「どうしたらいいと思う?」と聞くだけです。
AIも同じで、違うのはAIが事情を知らないという一点だけ。だから、目的と一緒に状況も話す。これはテクニックではなく、ただの会話です。
伝えるのは、この3つで足ります。
- どんな状況か(相手・規模・前提)
- 何がしたいのか(GOAL)
- どうすればいい?(問い)
足りないものは、AIに聞き返させる
情報が足りているかどうかは、AIのほうが分かっています。だから、こう言えば済みます。
「判断するために足りない情報があれば、先に質問してください。」
この一言で、AIが必要なことを聞いてきます。完璧な依頼をする必要は、まったくありません。
3. 私の場合:4つのAIを、社内の「人材配置」として考える
ここからは、複数の事業を運営している私自身の使い方です。
AIを選ぶとき、多くの人が「どれが一番賢いか」で比べます。でも実務では、**「どの仕事を、誰に任せるか」**で考えたほうがうまくいきます。社内の人材配置と同じです。
私は、4つをこう配置しています。
| AI | 社内でいうと | 任せていること |
|---|---|---|
| Claude Code | 優秀な経営の右腕 | 企画の壁打ちと、実務のディレクション |
| ChatGPT | デザイン系の実務担当 | デザインに関する打合せと実行 |
| Gemini | 社内ナレッジの運用担当 | 社内チャットボット、マニュアルの作成と運用 |
| Genspark | アルバイトスタッフ | どのAIも契約していない場合でも、少量業務なら幅広くカバー |
なぜこの配置になるのか。それぞれの「得意」が違うからです。2026年9月時点の状況を、簡単に整理します。
Claude Code ── 経営の右腕
名前に「Code」とついていますが、プログラミング専用ツールではありません。2026年4月に「Cowork」が正式提供となり、チャット画面だけで使えるようになったため、開発部門のない会社でも導入できます。
強みは、長く複雑な文脈を保ったまま、一緒に考え続けられること。1Mコンテキスト(長文の保持)に対応しており、企画を最初から最後まで通して壁打ちするのに向いています。議事録の整理、データ集計、資料作成といった実務も任せられます。
私が「右腕」に置いているのは、判断の材料を出させ、私の考えを批判させる相手として一番機能するからです。
ChatGPT ── デザイン系の実務担当
2026年4月に画像生成が「ChatGPT Images 2.0(gpt-image-2)」に更新され、日本語テキストの描画精度が大きく向上しました。以前は日本語を入れると文字化けしていたバナーが、実用レベルで作れるようになっています。
日本語のプロンプトをそのまま書くだけで画像が出るため、デザインの専門知識がなくても、イメージを形にして議論することができます。バナー、SNS投稿画像、提案資料のビジュアル。この領域は今のところChatGPTが担っています。
Gemini ── 社内ナレッジの運用担当
Googleの「NotebookLM」は、2026年7月に**「Gemini Notebook」へ名称変更**されました(同じ製品です)。これは、自社の資料だけを根拠に答えさせることに特化したツールです。
社内マニュアル、規程、議事録を読み込ませておけば、その資料の中からだけ答えるチャットボットになります。一般的なAIチャットと違い、根拠となった箇所を確認できるのが利点です。
さらに2026年8月から、対象のWorkspaceプランでソースの追加を自動化できるようになりました。新しい資料ができるたびに手で追加しなくても、ワークフローの中で自動で取り込めます。社内ナレッジを「勝手に育つ状態」にできるわけです。
なお、Google Workspaceを使っている会社であれば、管理者側で利用を制御できます。会社として使うなら、契約プランと管理者設定を必ず確認してください。
Genspark ── アルバイトスタッフ
Gensparkの特徴は、GPT・Claude・Geminiなど複数のAIモデルが、1つの契約の中で動くことです。どのモデルを使うかを意識せずに、調査・スライド作成・表計算・画像生成までを1画面で進められます。
つまり、主要なAIを個別に契約していなくても、少量の業務なら幅広くカバーできる。だから私は「アルバイトスタッフ」に位置づけています。無料プランもあるため、まず試す入口としても向いています。
4. ただし、これは私の例です
4つ全部を契約する必要はまったくありません。ひとつでも十分に戦えます。
大事なのは、ツールの数ではなく、「この仕事は誰に任せるか」を自分で決めていることです。それは結局、第1章の話に戻ります。GOALを決め、任せる範囲を判断するのは、あなたです。
そしてもうひとつ。ここに書いた製品情報は、半年で古くなります。 この分野の更新速度は異常です。だからこそ、覚えるべきは製品名ではなく、役割分担という考え方のほうです。
最後に:診断士がAIを使うときの、二つの注意
技術の話ではありませんが、ここだけは押さえてください。事故になります。
① クライアントの生データを、そのまま貼らない
決算書、名簿、議事録、契約書。悪気なく貼ってしまう人がいますが、やってはいけません。
AIに必要なのは構造であって、固有名詞ではありません。社名・人名を伏せ、実額を規模感に置き換え、特定できる要素を消してから渡す。それでも返ってくる示唆はほとんど落ちません。
また、多くのAIサービスには入力内容を学習に使わせない設定や法人向けプランがあります。使う前に一度、設定画面を確認してください。
② 数字と制度は、必ず一次情報で確認する
AIは平然と嘘をつきます。悪意ではなく、もっともらしい文章を作る仕組みだからです。
特に危ないのは、補助金の要件・締切・金額、法改正、税率、統計の数字、判例や出典。診断士が扱うのはまさにこの領域です。ここで事故ると信用が一発で飛びます。
数字・制度・出典が出てきたら、必ず官公庁の公式ページで確認する。これを手順にしてしまってください。
効率化はAIの仕事。責任は、あなたの仕事です。
読んで分かることと、できるようになることは違う
ここまでを押さえれば、今日からAIは使えます。
ただ、AI活用は毎日使って初めて手が覚えます。 実際の経営課題を前にすると、「どこまでAIに任せて、どこから自分で決めるか」の線は、思ったより揺れます。その線を体で覚えるには、繰り返すしかありません。
HAMMERの実務従事では、現役経営者のナマの経営課題が毎日「お題」として届きます。それを解き、レポートを提出する。翌朝には、提案とAIの使い方の両方にフィードバックが返ります。
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